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「要するに」って言わないで 尹 雄大
¥1,980
出版社:亜紀書房 ページ数:208 サイズ:188mm × 130mm 発売日:2025/09/30 ISBN:978-4-7505-1892-3 〈出版サイトより〉 この本が目指すのは、「自分のダメなところを変える」ことではありません。 あなたが負った傷を、そっと癒すためのセルフケアです。 そのために必要なのは、自分の話を、正しいとか間違ってるとかジャッジせずに、ぜんぶ聞くこと。 そして、勇気を出してぜんぶ語ること。 著者プロフィール 尹 雄大 (ユン ウンデ) (著) 1970年、神戸市生まれ、テレビ制作会社勤務を経てライターになる。主な著書に『さよなら、男社会』、『つながり過ぎないでいい』(以上、亜紀書房)、『句点。に気をつけろ』(光文社)、『聞くこと、話すこと』(大和書房)など。 武術や整体を通して得た経験から身体と言葉の関わりに興味を持っており、その一環としてインタビューセッションを行っている。
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さみしくてごめん 永井 玲衣
¥1,760
〈出版サイトより〉 「わたしはいつまでも驚いていたい。こわがっていたい。絶望して、希望を持ちたい。この世界から遊離せずに、それをしつづけたい。世界にはまだまだ奥行きがあるのだから。」 今、もっとも注目される書き手、永井玲衣の最新刊! 哲学は心細い。さみしい。だがわたしは、さみしいからこそ哲学をしているような気がする。生まれてきたことがさみしい。わからないことがさみしい。問いをもつことがさみしい。問いと共に生きることがさみしい。(本文より) ことばが馬鹿にされ、ことばが無視され、ことばが届かないと思わされているこの世界で、それでもことばを書く理由は何だろう。わたしの日記は、戦争がはじまって終わっている。あの瞬間から、日記は戦時中のものとなった。 だが、ほんとうにそうなのだろうか。戦争はずっとあったし、いまもある。わたしが絶望したあの戦争は、いまもつづいている。だからあの日記はすでに戦時中のものだったし、この本も、やはり戦時中のものである。 とはいえ、わたしたちの生活に先立って、戦争があるわけではない。生活の中に戦争が入り込むのだ。どうしたって消すことのできない、無数の生の断片があるのだ。たとえ「対話」ができず、あなたのことばを直接きくことができなかったとしても、決して「ない」のではない。(「あとがき」より) 目次 1 やっぱりハリーポッタリ わたしが飲むとこ見ててよ タイツを履き忘れてすみませんでした ばかものよとかうざいんだけど シーサーには怖い顔をしていてほしい 箸、ごめんなさいね 夜に手紙を書くな 思ったより小さい あたらしい犬を提案する 2 念入りな散歩 1月1日の日記 思い出せないことが絶えず思い出される街、渋谷 見られずに見る 試みる 3 さみしくてごめん それ、宇宙では通用しないよ iPadを叩き割れ 後ろの風景を置き去りにすれば見える そうなのか これが そうなのか 身に覚えのない場合はご対応ください なんだかさみしい気がするときに読む本 考えるための場 4 この本はもう読めない 枕辺の足 きみの足を洗ってあげる 穴だらけの幸福 ただ存在するたけ運動 徹夜のための徹夜 ないがある 今は、知っている ただ、考えたい あとがき 出版社:大和書房 ページ数:240 サイズ:四六判 発売日:2025年6月18日 ISBN:978-4-479-39453-2
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わからなくても近くにいてよ 堀 静香
¥1,870
〈出版サイトより〉 穂村弘氏 推薦! 生きることに慣れないことの天才を感じました。 魂に永遠の初心者マークが貼られてるみたい。 でも、だからこそ、一瞬一瞬、ものすごく生きている。 『せいいっぱいの悪口』で圧倒的存在感を示した気鋭の作家の3冊目となるエッセイ集。12篇のエッセイと1年間の日記で構成。なんでもない日常を繊細に丁寧に時に乱暴に切り取ってみせる、読めば読むほど深い味わいのある清新な文章をお楽しみください。 著者プロフィール 堀 静香 (ホリ シズカ) (著) 1989年神奈川県生まれ。山口県在住。上智大学文学部哲学科卒業。歌人、エッセイスト。「かばん」所属。現在は私立の中高一貫校で非常勤講師として国語を教えている。著書にエッセイ集『せいいっぱいの悪口』『がっこうはじごく』(共に百万年書房)、歌集に『みじかい曲』(左右社)がある。第50回現代歌人集会賞受賞。 出版社:大和書房 ページ数:272 サイズ:四六変型判 発売日:2024年11月23日 ISBN:978-4-479-39440-2
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オーロラが見られなくても 近藤 史恵
¥1,870
消えてしまいたいと思うとき、 どこか遠い地でひっそりと、 でも、確かに回復し、 また帰ってこられることを願う。 軽い読み心地に、深い味わいの短編集。 〈出版サイトより〉 ままならぬ人生を歩む五人が旅先でみつけるものとは? 心ときめく景色と料理に満ちた、世界を旅する物語。 それはわたしの人生に、ひさしぶりに点った、遠い目標だった。 壁も屋根も、街全体が真っ青でまるで夢の中に迷い込んでしまったような、モロッコのシャフシャウエン。二十七歳の岬はここに「自分を少し捨てに」やってきた。グラスにあふれんばかりの生のミントと熱くて甘い緑茶を注いだミントティーや、帽子のような鍋に入ったレモンとチキンのタジン。初めての景色と料理に出会った岬に、予想外の事態が起こり……。(「ジブラルタルで会えたら」)長年の介護が突然終わった佳奈は、アイスランドを訪れた。胸を突かれるように美しい氷河湖や、屋台で買って頬張る熱々の“全部のっけ”のホットドッグ。輝かしい未来なんて想像もできなかった佳奈だけれど、胸にある思いが湧きあがる……。(「オーロラが見られなくても」) 著者プロフィール 近藤 史恵 (コンドウ フミエ) (著) 1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学卒。在学中に執筆した『凍える島』で鮎川哲也賞を受賞しデビュー。2007年刊行の『サクリファイス』が絶賛を浴び、同作で08年大藪春彦賞を受賞。その他の著書に『ねむりねずみ』『天使はモップを持って』『二人道成寺』『タルト・タタンの夢』『ダークルーム』『モップの精は旅に出る』『スティグマータ』『マカロンはマカロン』『ときどき旅に出るカフェ』『インフルエンス』『震える教室』『みかんとひよどり』『歌舞伎座の怪紳士』『夜の向こうの蛹たち』など多数。 出版社:KADOKAWA ページ数:208 サイズ:四六判 発売日:2025年11月8日 ISBN:978-4-04-116320-7
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「なむ」の来歴 斎藤真理子
¥1,980
〈出版サイトより〉 日本、韓国、沖縄、どこへ行っても本は木(ルビ:なむ)で出来ていた。 「三十代初めまでは身近に詩があった。だからこの本にもちょくちょく自分の書いた詩が顔を出す」。著者がこれまで生きてきた日本、韓国、沖縄で感じたこと、言葉にしたこと、詩で表現したこと。三点測量するように書いてきたエッセイを集大成。 ●本文より 韓国に来る前に持っている本を全部売った。古本屋のおじいさんが部屋まで来てくれて十年間私が引越しのたびにひきずって歩いた活字の群れをそっくり引き取ってくれた。さよなら 私の本たち。それはたいそう重かった。 「本って、本当に重いですよね」私が言うと おじいさんが答えた。「さようでございますもともと木でございますからね」(第一章「プラタナス」より) 三十代初めまでは身近に詩があった。だからこの本にもちょくちょく自分の書いた詩が顔を出す。日本語でも一冊詩集を出し、ソウルにいるときには朝鮮語で書き、それらが一九九三年に韓国の民音社から『入国』として出版された。外国人がハングルで書いた珍しい本ということで、当時かなり話題になった。それはちょうど、韓国でいくつかの詩集が驚異的なセールスを記録していた時期と重なる。特に、崔泳美(チェ・ヨンミ)という詩人の『三十、宴は終わった』(日本語版はハン・ソンレ訳、書肆青樹社)が一九九四年に刊行され、その年だけで五十万部以上を売り上げるという空前のベストセラーとなった。私の詩集が読まれ、すぐに重版がかかったのも、こうした流れの中のできごとだ。民主化からあまり時間が経っていなかった九〇年代初頭の韓国人たちは好奇心に満ち、新しいもの、変わったものに対して寛容だった。(「あとがき」より) 著者プロフィール 斎藤真理子 (サイトウマリコ) (著) 1960年、新潟市生まれ。翻訳者。著書に『増補新版 韓国文学の中心にあるもの』『本の栞にぶら下がる』『隣の国の人々と出会う――韓国語と日本語のあいだ』。訳書にチョ・セヒ『こびとが打ち上げた小さなボール』、ハン・ガン『ギリシャ語の時間』、チョン・セラン『フィフティ・ピープル』、チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』、ファン・ジョンウン『ディディの傘』、李箱『翼――李箱作品集』、パク・ソルメ『未来散歩練習』などがある。2015年、共訳書パク・ミンギュ『カステラ』が第一回日本翻訳大賞受賞。2020年、訳書チョ・ナムジュ他『ヒョンナムオッパへ』で第18回韓国文学翻訳大賞(韓国文学翻訳院主催)受賞。2025年、ハン・ガン『別れを告げない』で第76回読売文学賞(研究・翻訳部門)を受賞。 出版社:イースト・プレス ページ数:280 サイズ:四六判 発売日:2025年11月20日 ISBN:978-4-7816-2508-9
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しおりとめくり 北澤平祐作品集
¥4,400
〈出版サイトより〉 見る人を夢と空想の世界へと誘う、北澤平祐の世界へようこそ。 人気お菓子ブランドのパッケージをはじめ、広告や書籍装画、雑貨、アパレルまで――幅広いジャンルで心をときめかせる作品を生み出してきた、イラストレーター・北澤平祐。かわいらしい少女や動物たちが織りなす、やさしくて少し不思議な世界は、見る人の心をあたためてくれます。本書は、ジャンルを越えて広がってきたこの10年ほどの歩みをまとめた、宝物のような作品集。箔押しがきらめくカバーに、蛍光ピンクを差し色に用いた特殊印刷で、作品の魅力を鮮やかに表現しました。 さらに、美大生しおりとめくりの二人のアトリエ整理日誌という形式で書き下ろしたエッセイ9篇も収録。手に取るたびに、新しい発見とときめきに出会える一冊です。 コンテンツ Contents 1章 あれこれ いえごと わたしごと 〈おうちじかん〉 At Home ― family time, me time, this and that 2章 叶わぬままでも うつくしいもの 〈ゆめみる〉 Dreaming ― of beautiful, impossible things 3章 未来は星まかせ 〈うらなう〉 Fortune Telling ― leave the future up to the stars 4章 コロコロ フルーツ パレード 〈くだもの〉 Fruit ― a rollicking parade of juicy beauties 5章 おいしいもの すこしずつ ぜんぶ 〈たべもの〉 Cuisine ― all the scrumptious delicacies, bite by bite 6章 行き先は未定 〈おでかけ〉 A Day Out ! Where shall we go? 7章 きらめく季節のまにまに 〈ハロウィン&クリスマス〉 Halloween & Christmas ― in the glow of enchanting seasons 8章 装幀の魔法 〈ほんのおしごと〉 A Bookish Job ― the magic of book designing 9章 お披露目の瞬間 〈パッケージとプロダクト〉 Packaging & Products ― unveiling designs 著者プロフィール 北澤平祐 (キタザワヘイスケ) (著) イラストレーター・作家。アメリカに16年間在住した後、 帰国してイラストレーターとしての活動を開始。多数の書籍の装画や、パッケージ、プロダクトなど幅広い分野でイラストを提供。著作に「ユニコーンレターストーリー」(集英社/ホーム社)、「ひげが ながすぎる ねこ」 (講談社)、「ゆかいようかいノート」 (小学館)、「ルッコラのちいさなさがしものやさん」(白泉社)、「The Current /北澤平祐作品集」(玄光社)などがある。 出版社:パイ インターナショナル ページ数:272 サイズ:B5変型判 発売日:2026年2月20日 ISBN:978-4-7562-5615-7
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はじめまして、ムンゲです。一匹の家族が教えてくれた、人生で大切なこと yeye (イェイェ)/菅原 光沙紀(訳)
¥1,870
SOLD OUT
近日中に再入荷予定です! 原書:'글멍' 〈出版サイトより〉 「この本は、ぼくが家族とすごす何気ない日々と、すべての人に伝えたいことをつづった一冊である」 SNS総フォロワー数20万人超!韓国でベストセラーになった犬のイラストエッセイが、ついに日本上陸! 「ウチの子が見る毎日は、どんな世界だろう?」 この本は、韓国に住む作家のyeyeが、14年間の人生を共にしたマルチーズのムンゲの視点に立って書いた、犬目線のほっこり日常イラストエッセイ。 読むだけで、周りの人や自分の人生を、もっと大切にしたくなる。 ●本書の内容 ・ムンゲが生まれた日 ・名前の由来 ・ママのエプロン ・ぼくだけの特等席 ・ムンゲ王 ・ぼくの友だち紹介 ・毛むくじゃら ・ぼくの心臓へ ・犬の天国 ・犬の時間と人間の時間 ……etc 著者プロフィール yeye (イェイェ) (著) アーティスト・エッセイ作家 日本の京都精華大学でアニメーションの学士号(2011年)と漫画・絵本コースの修士号(2013年)を取得後、故郷の韓国に帰国。 2022年に個展を開催し、画家としてデビューを果たす。アニメーションと絵画のテクニックを組み合わせて、自身の伴侶犬であるムンゲを芸術的に描きながら計4冊の書籍の出版と計2回の個展の開催に成功。 日本でのアーティスト活動は、本書が初めてとなる。 菅原 光沙紀 (スガワラ ミサキ) (訳) フリーランス翻訳者。 1998年生まれ。神奈川県出身。韓国・高麗大学環境生態工学部を卒業後、2023年よりフリーランスの翻訳者として産業翻訳やウェブトゥーン翻訳に携わる。 今年の秋から再び韓国に渡り、韓国文学翻訳院翻訳アカデミー正規課程に在籍中。 出版社:PHP研究所 ページ数:256 サイズ:四六判 発売日:2024年11月28日 ISBN:978-4-569-85824-1
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ムンゲ、君と出会えたから 15歳のマルチーズが教えてくれた「確かな幸せの見つけ方」 yeye (イェイェ)/菅原 光沙紀(訳)
¥1,980
SOLD OUT
近日中に再入荷予定です! 原書:'너에게 배운 예를 들면 고구마를 대하는 자세' 〈出版サイトより〉 「私の10年をあげるから、君にはもっと生きてほしい」」 ――そんな願いをこめて綴られた、涙と愛にあふれた一冊。 15歳で旅立ったマルチーズ・ムンゲ。 大切な存在との「お別れ」を前に、どう気持ちを整えればいいのか。私たちには何ができるのか。 韓国のアーティスト・yeyeが、最愛のパートナーであるムンゲとのお別れをやさしく受け入れていくための日々を描いたイラスト×エッセイ第二弾。 何気ない日常が、愛おしくてたまらない記憶になっていく。 読めばきっと、「今そばにいる誰かを、もっと大切にしたくなる」。 大切な人を思うすべての方へ贈りたい、静かで深い物語です。 【本書の内容】 ・尊くてふしぎな瞬間 ・小さいけれど確かな幸せ ・言葉にできないほどの愛はダンスで ・春が楽しいのは君のおかげ ・いそがしいムンゲ ・15歳のマルチーズに教わること ・絶対に忘れたくないから ・ついつい、君をさがしてしまう ・「はじめまして!」 ・眠くなる匂い ・特別だけど、特別じゃない一日 ……etc 著者プロフィール yeye (イェイェ) (著) アーティスト・エッセイ作家 日本の京都精華大学で2011年にマンガ学部アニメーションコースを卒業し、2013年に大学院マンガ研究科修士課程を修了。その後、故郷の韓国に帰国。 2022年に個展を開催し、画家としてデビューを果たす。アニメーションと絵画のテクニックを組み合わせて、自身の伴侶犬であるムンゲを芸術的に描きながら、韓国内で計4冊の書籍の出版と計2回の個展の開催に成功。日本では『はじめまして、ムンゲです。 一匹の家族が教えてくれた、人生で大切なこと』(PHP研究所)を2024年に初刊行。 菅原 光沙紀 (スガワラ ミサキ) (訳) 韓日翻訳者 1998年生まれ。神奈川県出身。高麗大学環境生態工学部卒業。フリーランスの翻訳者として産業翻訳やウェブトゥーン翻訳、出版翻訳に携わる。現在は韓国文学翻訳院翻訳アカデミー正規課程に在籍中。訳書にyeye著『はじめまして、ムンゲです。 一匹の家族が教えてくれた、人生で大切なこと』(PHP研究所)がある。 出版社:PHP研究所 ページ数:296 サイズ:四六判 発売日:2025年8月1日 ISBN:978-4-569-85951-4
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本を作るのも楽しいですが、売るのはもっと楽しいです。 金承福 (キムスンボク)
¥2,420
〈出版サイトより〉 大学の先輩が手書きで韓国語に訳してくれた吉本ばななの『キッチン』、茨木のり子の詩に重ねた民主主義への思い、ハン・ガンの初邦訳作品『菜食主義者』刊行の舞台裏――互いの国の物語をつないできた人々の情熱が、日韓文学の未来をひらく。出版社クオンの社長による、読むことへの愛と信頼に満ちたエッセイ! 目次 はじめに 韓国文学ブームに前史あり さぁ、社長の仕事をしなくちゃ 広告コピーで学んだ日本語 「第一子」はハン・ガン『菜食主義者』 スーザンと二人の老詩人 朴景利先生の『土地』 友だちになること 本の中の小道 戒厳令の夜 社長の仕事 詩の魔法 Kビレッジだなんて 神保町の隣人たち 情熱に満ちたたくさんの人々 人生の師、金石範先生 企画が動き出すとき 池明観先生の卒論指導 馬鍾基さんとその父をめぐる時間旅行 上・下 大きな世界観――李光洙と波田野先生 『広場』と崔仁勲先生 私を育ててくれたのは八割が風だった 本の処方箋 ノーベル文学賞をハン・ガンの引き出しにしまっておいた Poem Post――四元康祐さん 桃のような人 交流の扉をひらく 人と人が出会うという、とてつもないこと 出版都市、坡州で 文学と食べ物 ソウル国際ブックフェア 韓国と日本の「街の本屋」 書店が地域を育てる おわりに 本書に登場する韓国文学の作家たち 著者プロフィール 金承福 (キムスンボク) (著) 金承福(キムスンボク) 1969年,韓国全羅南道霊光郡生.ソウル芸術大学で現代詩の創作を学び,1991年に日本に留学.日本大学芸術学部文芸科を卒業後,広告業界で働く.2007年に出版社〈クオン〉を設立.2011年,K-BOOK振興会設立.2015年には神田神保町に韓国語原書書籍・韓国関連本を専門に扱うブックカフェ〈CHEKCCORI(チェッコリ)〉をオープン.トークイベントや文学ツアーなど,日本と韓国の文学をつなぐ出版活動を幅広く行っている. 出版社:岩波書店 ページ数:212 サイズ:四六判 発売日:2025年11月21日 ISBN:978-4-00-061730-7
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涙の箱 ハン・ガン/きむ ふな (訳)
¥1,650
原書:'눈물상자' 한강 〈出版サイトより〉 ノーベル文学賞作家ハン・ガンがえがく、大人のための童話 この世で最も美しく、すべての人のこころを濡らすという「純粋な涙」を探して 昔、それほど昔ではない昔、ある村にひとりの子どもが住んでいた。その子には、ほかの子どもとは違う、特別なところがあった。みんながまるで予測も理解もできないところで、子どもは涙を流すのだ。子どもの瞳は吸い込まれるように真っ黒で、いつも水に濡れた丸い石のようにしっとりと濡れていた。雨が降りだす前、やわらかい水気を含んだ風がおでこをなでたり、近所のおばあさんがしわくちゃの手で頬をなでるだけでも、ぽろぽろと澄んだ涙がこぼれ落ちた。 ある日、真っ黒い服を着た男が子どもを訪ねてくる。「私は涙を集める人なんだ」という男は、大きな黒い箱を取り出し、銀の糸で刺繍されたリボンを解くと、大小、かたちも色もさまざまな、宝石のような涙を子どもに見せた。そして、このどれでもない、この世で最も美しい「純粋な涙」を探していると話す。男は子どもがそれを持っているのではないかと言うのだが――。 「過去のトラウマに向き合い、人間の命のもろさを浮き彫りにする強烈な詩的散文」が評価され、2024年にノーベル文学賞を受賞したハン・ガン。本書は童話と銘打ちながらも、深い絶望や痛みを描き、そこを通過して見える光を描くハン・ガンの作品世界を色濃く感じられる作品です。 幸せな出会いが実現し、日本語版の絵はハン・ガン自身、長年ファンだったというjunaidaさんが担当。ハン・ガンが、「読者それぞれのなかにある希望の存在」としてえがいた主人公や、どこともいつとも特定しない本作の世界を美しく描き、物語とわたしたちをつないでくれます。 2008年、韓国で発売され、本国では子どもから大人まで幅広い年齢層に愛されている本作。ハン・ガン作品との出会いにもおすすめの一冊です。 「きみの涙には、むしろもっと多くの色彩が必要じゃないかな。特に強さがね。 怒りや恥ずかしさや汚さも、避けたり恐れたりしない強さ。 ……そうやって、涙にただよう色がさらに複雑になったとき、ある瞬間、きみの涙は 純粋な涙になるだろう。いろんな絵の具を混ぜると黒い色になるけど、 いろんな色彩の光を混ぜると、透明な色になるように」 ―本文より― 涙をめぐる、あたたかな希望のものがたり。 著者プロフィール ハン・ガン (ハンガン) (著) 1970年、韓国・光州生まれ。延世大学国文学科を卒業。1994年、ソウル新聞新春文芸に短編「赤い碇」が当選し、作家デビュー。2005年、『菜食主義者』(クオン)で李箱文学賞を、また同作で2016年にアジア人初の国際ブッカー賞を受賞。2017年、『少年が来る』(クオン)でイタリアのマラパルテ賞、2023年、『別れを告げない』(白水社)でフランスのメディシス賞(外国小説部門)、また同作で2024年、フランスのエミール・ギメ アジア文学賞を受賞。2024年、「過去のトラウマに向き合い、人間の命のもろさを浮き彫りにする強烈な詩的散文」が評価され、ノーベル文学賞を受賞。他に『引き出しに夕方をしまっておいた』『そっと 静かに』(以上クオン)、『ギリシャ語の時間』(晶文社)、『すべての、白いものたちの』(河出書房新社)、『回復する人間』(白水社)などが邦訳されている。 きむ ふな (キムフナ) (訳) 韓国生まれ。韓国の誠信女子大学、同大学院を卒業し、専修大学大学院日本文学科で博士号を取得。日韓の文学作品の紹介と翻訳に携わる。訳書にハン・ガン『菜食主義者』、キム・エラン『どきどき僕の人生』、キム・ヨンス『ワンダーボーイ』、ピョン・ヘヨン『アオイガーデン』、シン・ギョンスク『オルガンのあった場所』(以上クオン)、孔枝泳『愛のあとにくるもの』(幻冬舎)など。共訳書にハン・ガン『引き出しに夕方をしまっておいた』(クオン)など。著書に『在日朝鮮人女性文学論』(作品社)がある。韓国語訳書の津島佑子『笑いオオカミ』にて板雨翻訳賞を受賞。 出版社:評論社 ページ数:88 サイズ:四六判 発売日:2025年8月18日 ISBN:978-4-566-02489-2
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朝のピアノ 或る美学者の『愛と生の日記』 キム・ジニョン/小笠原藤子 (著)
¥2,420
原書:'아침의 피아노' 〈出版サイトより〉 ノーベル賞作家ハン・ガンが3回読んだ本:「しばらく外国にいたとき、この本を1日いちど、3回読んだ。毎日読んでもいい本」 日常がシャッターを下ろすように中断されると知った時に……残ったのは「愛」だった。 『朝のピアノ』は、キム・ジニョン先生が天に召される三日前、意識混濁状態に入る直前まで、メモ帳に書き留められた生の日記である。 哲学者/美学者として著名であった著者が死を意識せざるを得なくなったとき、より明確に感じ取るようになったのは世界の美しさや愛、ささやかな日常のおもしろさだった。 〈雨降りの日、世界は深い思索に濡れる。そんなときは、世界が愛を待つ気持ちでいっぱいだということを知っている。わたしがどれほど世界を愛しているかも〉 〈もっと長生きしなければならないのは、もっと生きながらえるためではない。後回しにしてきたことに対する義務と責任を遂行するためだ〉 どこから読んでも静かに心に染みわたる一節が見つかる一冊。 〈本書は、多方面で活躍された著者が人生に幕を下ろす三日前までをメモに綴った日記である。だが、逆説的な部分があるとしても、焦点はあくまで「生」にあり、忍び寄る最期にあるのではない。彼が描く日常生活の何気ないワンシーンは、むしろ牧歌的ですらある。不安を抱えながらも、冷静さを保とうと努め、前向きな姿勢を取り続ける。生への執着および葛藤、愛着、賛美、そして周囲へ向ける視線、配慮、感謝、愛。音楽や文学で色付けられ、重厚でいてシンプル。そして最期まで守り続けた、人としての威厳に心打たれる。淡々と綴られているにもかかわらず、この日記は奥深い。(訳者あとがきより)〉 著者プロフィール キム・ジニョン (キムジニョン) (著) 哲学者/美学者 高麗大学ドイツ語独文学科と同大学院を卒業し、ドイツのフライブルク大学大学院(博士課程)留学。フランクフルト学派の批判理論、特にアドルノとベンヤミンの哲学と美学、ロラン・バルトをはじめとするフランス後期構造主義を学ぶ。小説、写真、音楽領域の美的現象を読み解きながら、資本主義の文化および神話的な捉えられ方を明らかにし、解体しようと試みた。市井の批判精神の不在が、今日の不当な権力を横行させる根本的な原因であると考え、新聞・雑誌にコラムを寄稿。韓国国内の大学で教鞭をとり、哲学アカデミーの代表も務めた。バルト『喪の日記』の韓国語翻訳者としても知られる。 小笠原藤子 (オガサワラフジコ) (著) 上智大学大学院ドイツ文学専攻「文学修士」。現在、慶應義塾大学・國學院大學他でドイツ語講師を務める傍ら、精力的に韓国語出版翻訳に携わる。訳書にチョン・スンファン『自分にかけたい言葉 ~ありがとう~』(講談社)、リュ・ハンビン『朝1 分、人生を変える小さな習慣』(文響社)、イ・ギョンヘ『ある日、僕が死にました』(KADOKAWA)、ケリー・チェ『富者の思考 お金が人を選んでいる』(小社)など多数。 出版社:CEメディアハウス ページ数:272 サイズ:四六変型判 発売日:2025年3月28日 ISBN:978-4-484-22127-4
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わたしたちの停留所と、書き写す夜 キム・イソル/小山内 園子【翻訳】
¥2,200
再入荷しました! 原書:'우리의 정류장과 필사의 밤' 김이설 〈出版サイトより〉 わたしの言葉を、 わたしはまだ取り戻せるだろうか。 40代未婚の「わたし」は、老いた父母やDVを受けて実家に戻ってきた妹親子のケア労働に果てなく追われ、詩人になる夢も「あの人」とのささやかな幸せもすべてを諦めて生きている。一日の終わりに、好きな詩を筆写することだけが自分を取り戻す時間であった「わたし」が、それすら失ってしまう前にとった選択とは――。 韓国フェミニズムのうねりのなか生まれ、いま「停留所」に佇むすべての人におくる、真に大切なものを静かに問いかける「人生小説」。 *****韓国読者から共感の声続々! ****** (オンライン書店レビューより) 「主人公の状況に息が詰まった。応援してしまう」 「誰かが私の物語を、代わりに書いてくれた気がした」 「慣れようとしても慣れることのできない家事や介護を引き受けている人なら、 思わず涙が出そうなこの物語。無限に共感できる」 「ほんの二、三時間でいいから自分として生きられる時間が欲しかったあの頃。 そんな時期に耐えている、すべての女性たちへの叫びのような物語」 「読んだあとで恋人の性別を知ってもっとせつなくなった。そのプロセスも含めてこの作品が大好き」 「主人公のすべての選択を、応援したくなる本。みんな、幸せになろう」 「家庭でも社会でもひたすら〈わたし〉でいつづけられない。 そう感じる人だけが理解できる、わからない人には絶対に共感できない物語」 「家事の責任を負いながら、誰にも言えない悩みまで抱え、 大学進学も家の事情に合わせた自分を慰めてくれる小説」 「周りや世間を喜ばせるために生きなきゃならないんじゃない、 自分がうれしいときにはじめて、自分をとりまく世界は完全なものになる。そんなことを教えてくれる」 訳者あとがき 小山内園子 誰もに、かけがえのない時間、それを失くしたら自分が自分でいられなくなるような時間は存在すると思う。 ひたすら何かに打ち込む時間、大切な相手と過ごす時間、好きなものを食べ、飲み、あじわう時間、ひとりきりになれる時間……。「夢」というには日常的すぎるが、だからといって、いつでも簡単に叶うわけではない。生きるためのさまざまなタスクの中で、唯一純粋に、自分のためのものと言える時間だ。 その対極にあるのが、どんどん個人の時間に侵食してくるケア労働だろう。やっても賞賛や報酬を得られることは少ないが、やらなければ責任を問われかねない。終わりなき日常を維持するための裏方仕事。 本書の主人公は、詩を書く時間を最もかけがえがないと思う40代の女性である。いつ詩人になれるかはわからない。でも書き続けている。書けない日は気に入った詩を書き写して、少しでもいいから理想の詩に近づこうと努力する。詩を書きたいのか、それとも「詩人」という社会的地位に憧れているのかと、ときどき自問自答したりもするが、詩に打ち込む時が最も自分らしくいられることだけは間違いない。 その彼女が、ある事件をきっかけに、自分のほぼすべての時間を家族のケア労働に捧げざるを得なくなる。心が死んでいく。そしてついに、一つの決心をする──。 本書は、2020年に韓国で刊行されたキム・イソルの中篇小説『わたしたちの停留所と、書き写す夜(우리의 정류장과 필사의 밤)』の全訳である。底本には初版を利用した。 邦訳されているキム・イソル作品は、この訳者あとがきを書いている2025年8月現在、短篇一作しかない。『韓国フェミニズム小説集 ヒョンナムオッパへ』(斎藤真理子訳、白水社、2019)という書下ろし小説集に収められた「更年」がそれである。更年期を迎えた40代の「私」は、ある日中学生の息子が、受験勉強のストレス解消のためだけに、同じ学校の女子と合意の上でセックスをしていることを知る。恋人関係ではないから愛のないセックスだが、合意があるからレイプではない。混乱した「私」は夫に相談するが、夫は息子のことを「正常な男として育ってる」と全肯定し、一方で相手の女子のことは「頭がおかしい」「体でたぶらかそうとしてる」と言い放つ。男と女で、社会が期待する役割も、親が望む子どもの理想像も違う。生殖の機能を失いつつある自分の身体と、初潮を迎えて数年であろう息子の相手の身体を重ねながら、「私」は、この社会で女性として生きる痛みを改めて感じる。 性、家族、そして暴力。作家生活の序盤、それらはキム・イソルにとって非常に重要なモチーフだった。しかし、本書の「作家のことば」にも書かれているスランプの時期をくぐりぬけて、少しずつ作風は変わりつつある。彼女自身が再起を確信した物語が本書である。 ■「居心地が悪い」小説を発表する作家 1975年に生まれたキム・イソルは、2006年にソウル新聞の新春文芸に当選して作家デビューを果たした。本書にも登場するこの「新春文芸」とは、韓国における作家の登竜門の一つだ。20歳の冬に小説家になることを決意した彼女は、それから10年間、春と秋には文芸誌の新人賞へ、年末には新春文芸へ、それぞれ作品を応募しては結果を待つ日々を過ごした。つまり、10年にわたって落選の憂き目をあじわい続けたことになる。本書の主人公の、「選ばれない人になって、負け犬になって、そのまま無用な人間になってしまったらどうしよう」(78ページ)という心情は、まさに作家本人の実体験から来ている。 作家を目指す歳月のあいだに、彼女をとりまく状況も少しずつ変わる。大学を卒業して、母親の介護を経験して、結婚をした。第一子を妊娠中、「これで最後にしよう」と心に決めて応募した作品が、ついに新春文芸に当選する。吉報が届いたのは出産から約半月後。キム・イソルは、母親としての生活と職業作家としての生活をほぼ同時に始めることになった。 新春文芸に当選したデビュー作の短篇「十三歳」は、日本なら「衝撃の話題作‼」という帯付きで刊行されそうな内容である。主人公は、母親と地下鉄駅に暮らす十三歳の少女ホームレス。十分な性の知識もないまま、少女はさまざまな男たちの有形無形の暴力にさらされ、妊娠してしまう。施設で出産するも子どもを手放した少女は、行く当てもないまま再び路上に流れ着く。残酷なストーリー、端正ながら臨場感あふれる文章は「衝撃的な状況が、むしろ強烈な逼迫ぶりを帯びている」と審査員から高い評価を受けた。 続く作品でも、キム・イソルは社会の底辺であえぐ女性たちを多く登場させている。解説で小説家のク・ビョンモが触れている作品『汚れた血(나쁜 피)』(未邦訳)は、川べりに住む古物商一家の物語だ。主人公の30代女性の周囲に配置されるのは、アルコール依存症の祖母、知的障害があって地域の男たちの性的なからかいの的にされていた母、不倫の末に家を出た従姉妹、さらに従姉妹が残していった口のきけない娘など、やはり辛酸をなめる女性たちである。彼女たちを、家父長制の権化のようなおじが牛耳っている。この作品でも、女性の身体は、社会にはびこる暴力と矛盾が再現される場所として描かれる。 キム・イソル作品には登場人物が初潮を迎える場面がよく登場するが、血は女性の運命の象徴のように読める。 そうした彼女の作品を「居心地が悪い(불편하다)」小説と呼ぶ読者も少なくなかった。確かに彼女の小説を読むと、とにかく想像を喚起される。もしかしたら自分も、地下鉄の駅で路上生活をする少女と、川べりの集落で男に殴られている女性と、すれ違っていたかもしれない。そうした存在に目を背けてきたのかもしれない、と。自身の作品への居心地の悪さを伝える読者の声について、キム・イソルは「多くの物を手に入れて美しく暮らしている人々の物語を、あえて書く理由はないと思う。問題を抱えた人物を通じて、社会に問いを投げかけたい」( 京キョンヒャン郷新聞、2010年3月21日付)と、むしろ意識的にそうした題材を選んでいることを明らかにしている。 デビュー以来ひたすら書き続け、若い作家賞、ファン・スンウォン新進文学賞を受賞。着実な歩みは、しかし2015年のあたりで失速する。そこから2、3年の間、彼女は物語を作り出せなくなってしまう。 ■「フェミニズム・リブート」から見つめ直す 理由の一つはケア労働である。デビューから10年近く経ち、いまや二人の娘の母親となった彼女は、書ける時間に、書ける分量の作品を書くしかない。作品はどうしても短篇や中篇に偏りがちになる。長篇をどれくらい書いたかが作家を評価する基準の一つとされるなか、ケア労働と執筆活動を必死で両立させてきた彼女がバーンアウトに襲われたとしても、不思議ではないだろう。 さらに、フェミニズムとのかかわりから自らの作風を真摯に問い直したことも理由だったと、彼女は本書刊行時のインタビューで語っている。 2015年、韓国ではフェミニズムの大衆化が進み、若い世代を中心に「私はフェミニスト」というアイデンティティが生まれた。文化評論家のソン・ヒジョンが「フェミニズム・リブート」と名付けたその動き、すなわち背景化されていた女性差別を問い直す空気の中で、キム・イソルも、自らの小説を点検せざるを得なくなった。 「以前は、自分の視線がすなわち世間の人の視線だと思っていたんですが、それは男性目線だったと気づきました」「『これが現実』と見せていたものは、実は女性を性的に対象化していたものでした。誰かにとって痛みになったり、傷になったりする発信なのであれば、それは、もう一度考えてみるべき部分じゃないだろうかと……」(ソウル新聞、2020年8月12日付) 自分の言葉を疑い始めて、彼女は物語を紡げなくなった。なんとか言葉を失わないよう、必死の想いで詩にすがったことは、「作家のことば」に詳しい。 ■人生の停留所を経たからこそ スランプをくぐりぬけて作家がたどり着いた場所が、本書である。 これまでの歩みと比較しながら内容を見ると、かつて重要なモチーフになっていた暴力の気配は、ずいぶんと影を潜めている。文体も、詩を書く主人公の一人称ということもあるだろうが、一文一文が短く鋭かったこれまでの作品に比べれば、実に軽やかでリズミカルだ。挿入される詩が、さらに物語に余白を与えている。著者によれば、編集者に渡した最初の原稿では、シーンや台詞、登場人物の思考や感情に合わせて、合計二十あまりを全文挿入していたのだという。物語の輪郭をくっきりさせるため、最終的には今のかたちに落ち着いたが、物語と詩を縒り合わせるような作業は、作家本人にとってもとても楽しかったようだ。 人物の造形にも広がりが生まれた。主人公の精神的な支えである恋人の性別について、キム・イソルは執筆時、女性を想定したという。翻訳にあたって訳者に唯一注文があったのもこの部分で、「主人公の恋人を、性別の確定されないかたちに訳してほしい」とのリクエストがあった。自分が描こうとするものへの誠実さに、改めて心打たれた。異性愛が前提で、女性嫌悪を内在させた社会を舞台に女性の悲哀を描いてきた作家は、自らのフェミニズムを更新したことで、より自由な、より広やかな、より明るい地平にたどりついたのだ。 考えてみれば、キム・イソルその人もまた、作家になるまでの10年間、またスランプの2、3年のあいだ、人生の停留所で時間を過ごしたのだろう。「10年」「2、3年」とさらりと書いてしまったが、渦中にいて終わりが見えない当人には、繰り返す季節がどれほど恐ろしかったかは想像に難くない。その停留所から、キム・イソルは再びバスに乗り込んだ。 2024年に発表された最新作は、長篇小説『私たちが安堵しているあいだ(우리 가 안도하는 사이)』である。49歳の女友達三人が、25年ぶりに海辺の町へ、三泊四日の旅に出る。なにげない思い出話にも、過去の悲しい行き違い、諦めた夢、消えない傷はよみがえる。大いに共感を誘い、連帯とシスターフッドに胸を熱くする物語だ。 「キム・イソル」はペンネームで、彼女の本名はキム・ジヨンである。「イソル」の筆名に漢字を当てれば「異イ ソル 説」。毎回異なる物語を描きたいという願いが込められている。何度かの停留所での時間を経て、彼女はまた、異なる物語を紡ぎ始めた。今後もキム・イソル作品を一つでも多く、日本に紹介できればと思う。 訳者とのやりとり一つ一つに、丁寧に応じてくださったキム・イソルさん、ありがとうございました。訳文をチェックしてくださった翻訳家のすんみさんにもこの場を借りてお礼申し上げます。また、エトセトラブックスのWeb連載「翻訳者たちのフェミニスト読書日記」で本書を紹介した時からこの物語に心を寄せて下さり、日本の読者へ紹介できる機会を与えてくれた編集者、松尾亜紀子さんに深く感謝いたします。 2025年8月 キム・イソル【著】 2006年『ソウル新聞』新春文芸に短篇小説「十三歳」が当選して作家活動を始める。短篇集『誰も言わないこと』『今日のように静かに』、長篇小説『汚れた血』『幻影』『線画』『私たちが安堵しているあいだ』がある。第1回ファン・スンウォン新進文学賞、第3回若い作家賞、第9回キム・ヒョン文学牌を受賞。 小山内 園子【翻訳】 NHK報道局ディレクターを経て、延世大学校などで韓国語を学ぶ。訳書にク・ビョンモ『破果』『破砕』(岩波書店)、カン・ファギル『別の人』(エトセトラブックス)、『大丈夫な人』『大仏ホテルの幽霊』(白水社)、イ・ミンギョン『私たちにはことばが必要だ』『失われた賃金を求めて』(すんみとの共訳、タバブックス)など、著書に『〈弱さ〉から読み解く韓国現代文学』(NHK 出版)がある。 出版社:エトセトラブックス ページ数:136 サイズ:191mm × 131mm四六変形判 発売日:2025/10/30 ISBN:978-4-909910-31-8
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日記の練習 くどうれいん
¥1,870
SOLD OUT
〈出版サイトより〉 「おもしろいから書くのではない、書いているからどんどんおもしろいことが増える」 小説、エッセイ、短歌、絵本と幅広い創作で注目される作家、くどうれいん。その創作の原点は日記にあった。そんな彼女の日記の初の書籍化が本書である。日々の短文日記=「日記の練習」とそれをもとにしたエッセイ「日記の本番」をとおして浮かび上がる、作家くどうれいん一年間の生活と思考と情動。書かなかった日も、あまりに長くなってしまう日も、それこそが日常のなかの日記だ。 著者プロフィール くどうれいん (クドウレイン) (著) 作家。1994年生まれ。岩手県盛岡市在住。著書にエッセイ集『わたしを空腹にしないほうがいい』『うたうおばけ』『虎のたましい人魚の涙』『桃を煮るひと』『コーヒーにミルクを入れるような愛』、歌集『水中で口笛』、小説『氷柱の声』、創作童話『プンスカジャム』、絵本『あんまりすてきだったから』などがある。 出版社:NHK出版 ページ数:256 サイズ:四六変型判 発売日:2024.9.19 ISBN:9784140057476
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死の自叙伝 金恵順(キム・ヘスン)/吉川凪(訳)
¥2,420
原書:'죽음의 자서전‘ 〈出版サイトより〉 2025年7月、ドイツHouse of World Cultures (HKW)による国際文学賞を受賞! 詩集による受賞、アジア人の受賞ともに初。 2021年12月、著者 金恵順が東アジアの詩人を表彰するスウェーデンの文学賞「Cikada Prize」を受賞 ===================================== 死の次に訪れる時間のなかで すすり泣くリズムたち 「あなたは既に死の中に生まれています」 光州民主化抗争やセウォル号事件など権力の暴力や怠慢によってもたらされた死、そしてすべての無念な死に捧げた「死の自叙伝」49篇と長詩「リズムの顔」。 韓国フェミニズム詩の旗手金恵順が奇抜なイメージ、スピード感、時にグロテスクですらある力強さを存分に発揮し2019年に<詩壇のノーベル賞>と称されるカナダのグリフィン詩賞をアジア人女性として初めて受賞した詩集。 残された者の痛みを抱く詩人は、死後の物語を追いかける。 わたしたちの生は、不完全な死だと告げながら。 三角みづ紀(詩人) 目次 死の自叙伝 リズムの顔(『翼の幻想痛』より) 『死の自叙伝』あとがき 『死の自叙伝』訳者解説 著者プロフィール 金恵順 (キム ヘスン) (著) 著者 金恵順〔キム・ヘスン〕 1955 年慶尚南道蔚珍生まれ。 詩人、評論家、ソウル芸術大学文芸創作科教授。文学博士。 大学在学中に東亜日報新春文芸に評論が当選し、卒業後の1979 年に季刊誌『文学と知性』で詩人として出発して以来、現在に至るまで韓国フェミニズム詩人の代表走者として活躍してきた。 これまでに『また別の星で』『カレンダー工場の工場長さん、見て下さい』『悲しみ歯磨き 鏡クリーム』『花咲け!豚』『翼の幻想痛』など十数冊の詩集のほか、詩論集を刊行している。金洙暎文学賞、素月詩文学賞、未堂文学賞、大山文学賞を受賞し、『死の自叙伝』英語版によって2019 年グリフィン詩文学賞(The Griffin Poetry Prize)を受賞した。 吉川凪 (ヨシカワナギ) (訳) 吉川凪(よしかわ なぎ) 仁荷大学国文科大学院で韓国近代文学専攻。文学博士。 著書に『朝鮮最初のモダニスト鄭芝溶』、『京城のダダ、東京のダダ─高漢容と仲間たち』、訳書として『申庚林詩選集 ラクダに乗って』、呉圭原詩選集『私の頭の中まで入ってきた泥棒』、チョン・ソヨン『となりのヨンヒさん』、朴景利『完全版 土地』、崔仁勲『広場』、李清俊『うわさの壁』などがある。 キム・ヨンハ『殺人者の記憶法』で第四回日本翻訳大賞受賞。 出版社:クオン ページ数:184 サイズ:四六判並製 発売日:2021.1.25 ISBN:9784910214214
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ソヨンドン物語 チョ・ナムジュ/古川 綾子(翻訳)
¥1,870
原書:'서영동 이야기' 조남주 出版社:筑摩書房 ページ数:224 サイズ:四六判 発売日:2024.7.11 ISBN:9784480832214 日韓累計165万部突破の『82年生まれ、キム・ジヨン』著者、チョ・ナムジュが問いかける! 弱肉強食社会で人間らしさを失わずに生きるには? 資産価値にこだわる者の果てしない欲望と苦悩。 持たざる者の苦労と、未来への希望。 韓国中間層の現実をリアルに描いたハイパーリアリズム連作小説。 舞台はソウルにある架空の町〈ソヨン洞(ドン)〉。近年の不動産バブルやマンション購入、過剰な教育熱、所得格差といった社会問題が、住民の悲喜こもごもとともに描き出される――。 「私が伝えたかったのは、 個人ではどうすることもできない時代と社会の不幸を前に、 我々はどんな選択をできるのか、 どんな態度をとるべきかという悩み、 さらには人間らしさを失わずに生きる方法に対する問いかけでした」 (「日本の読者のみなさんへ」より抜粋) 目次 春の日パパ(若葉メンバー) 警告マン シェリーのママ、ウンジュ ドキュメンタリー番組の監督、アン・ボミ 百雲(ペグン)学院連合会の会長、ギョンファ 教養あるソウル市民、ヒジン 不思議の国のエリー 作家の言葉 日本の読者の皆さんへ 訳者あとがき 著者プロフィール チョ・ナムジュ (チョ ナムジュ) (本文) チョ・ナムジュ:1978年ソウル生まれ、梨花女子大学社会学科卒業。放送作家として社会派番組のトップ「PD手帳」や「生放送・今日の朝」などで時事・教養プログラムを10年間担当。2011年、長編小説「耳をすませば」で文学トンネ小説賞に入賞して文壇デビュー。2016年『コマネチのために』でファンサンボル青年文学賞受賞。『82年生まれ、キム・ジヨン』は大ベストセラー。第41回今日の作家賞を受賞(2017年8月)。『彼女の名前は』『サハマンション』『私たちが記したもの』など。 古川 綾子 (フルカワ アヤコ) (翻訳) 古川 綾子(ふるかわ・あやこ):翻訳家。延世大学教育大学院韓国語教育科修了。神田外語大学講師。NHKラジオ ステップアップハングル講座 2021年7-9月期「K文学の散歩道」講師を務める。主な訳書に『そっと 静かに』(ハン・ガン、クオン)、『走れ、オヤジ殿』(キム・エラン、晶文社)、『最善の人生』(イム・ソルア、光文社)、『明るい夜』(チェ・ウニョン、亜紀書房)、『君という生活』(キム・ヘジン、筑摩書房)、『エディ、あるいはアシュリー』(キム・ソンジュン、亜紀書房)などがある。
